ぐるっとパスを使って、森美術館に行ってきました。今回は200円の割引が使えて、少しお得に入館できました。音声ガイドをお願いしたところ、貸し出し機ではなく、自分のスマホで聞くスタイルでした。イヤホンがないと周囲の音で少し聞き取りにくいので、持参するのがおすすめです。館内では、作品にぶつかりそうな大きめの荷物はロッカーに預ける必要がありますが、電子決済対応なので財布を持っていなくても安心でした。
今回の目的は、「藤本壮介 建築の創造展」です。藤本壮介さんは、2025年大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」を設計した建築家で、今回が初の大規模個展とのこと。あの大屋根リングを、模型として間近で見ることができました。実際に万博で見たことのある建築を、改めて模型で見られて、正円の造形や木枠の組み方、その美しさに圧倒されました。「この素晴らしい建築を作った人はどんな方なんだろう」と思い、その興味から足を運びました。
展覧会は、活動初期から世界各地で進行中のプロジェクトまでを、8つのセクションで網羅的に紹介しています。模型や設計図面、竣工写真だけでなく、体験型のインスタレーションや大型模型、試作モデルなども多数展示されています。建築に詳しくない人でも、空間そのものを楽しめる構成で、まさに「現代美術館ならではの建築展」だと感じました。さらに、藤本さんが提案する未来の都市像を通して、「建築とは何か」「人と建物の関係はどうあるべきか」といった深いテーマにも触れています。
実際に展示を見てみると、想像の中にあった建築がどのように実物へと形を変えていくのか、そのプロセスがとても興味深かったです。紙の上に描かれた線が、スケールを持って立ち上がり、人の生活と違和感なく結びついていく。その変化を目の当たりにすると、建築という行為の奥深さに感動しました。
展覧会の映像インタビューでは、藤本さんの原点についても語られていました。幼少期を北海道で過ごし、その後東京へ出てきた際に、「北海道の自然と、東京杉並の街並みが似ている」と感じたそうです。自然と人工物というまったく異なるものが、密度や混ざり合う感じにおいて似ているというのがとても印象的でした。雑木林のように入り組んだ風景と、真っすぐな道の少ない東京の街。その両方に「いろんなものを受け入れる共用力」がある、と語っていたのが心に残りました。
このように、建築の背景や思想を知ることで、作品への理解が深まり、より一層「素敵だな」と感じられるのが、この展覧会の魅力です。展示は8つのセクションに分かれていますが、どれも見ごたえがありました。特にセクション1「思考の森」は、数多くの模型やオブジェが展示されていて、圧巻でした。それから、気になったのはセクション6「ぬいぐるみたちのもりのざわめき」。ここでは、建物たちがぬいぐるみになって、お互いの良いところを語り合うというユニークな演出がされています。彼らの会話を通して、各セクションの見どころも紹介されるので、思わずもう一度戻って見直してしまいました。
気づけば、滞在時間は3時間を超えていました。それほどまでに、一つひとつの展示が興味深く、見応えがありました。藤本壮介さんの建築は、ただの構造物ではなく、「人が生きること」「自然と共にあること」を優しく包み込むような温かさを感じさせます。未来を形にする建築の力を、存分に体感できて大満足でした。
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